スペアナで簡易NF測定
高周波AMPの特性を表示する大切な要素には利得/SWR/NFが挙げられます。このうち利得と
SWRはTG付きスペアナとSWRブリッジがあれば測定可能ですがNFは やはりNF計が必要です。
しかしNF計として有名な あの8970シリ−ズは精度も素晴らしいけど大きさも素晴らしく簡単に
持ち出すなんてできません。そこでコンパクトなNF計を目指してV4に続いて今回も僅かながら
前進させる事にしました。
1・ノイズでゆらぎのある状態を安定化する手段として平均化表示を追加しました。
2・NF-SG基板ASSYのENRを最適となるように調整して個別デ−タを添付します。
原理
NFの測定には広帯域に一定なホワイト・ノイズを発生するSGを使います。このSGを試料に入力して
出力のレベルを測定します。SGがONの時をHOT OFFの時をCOLDとするとNFは次の式で表現されます。
ここでENRはノイズSGの出力レベルです。
NF(dB) = ENR(dB) - HOT(dB) + COLD(dB)
この式はスペアナの内部のdB変換機能を使えば単純な加減の計算だけでNFの計算が可能な事を
示しています。またHOTとCOLDに特別な操作を加えない限りENRより大きなNFを測定する事が
出来ない事も示しています。今回の試作品も このレベルです。
0<NF<ENR
市販のNF計がENRの値より大きなNF値を測定可能なのはHOT/COLD側の片方に利得調整を
追加できるような仕組みが組み込まれているのではと推測しています。
測定系
・GigaStのSPの感度は-70dBmが下限ですが このレベルではLOGの直線性は良くないので最低でも
-60dBm以上で 測定しないと誤差が大きくなります。COLDのレベルが このレベルにならないと
いけないのでスペアナ入力の前には余裕を見て80dB程度の大きなAMPが必要になります。
可能ならば利得調整付きのAMPを使用してSP入力を 一定に したい所です。
・LOGの精度に誤差があると そのままNFの誤差となるので誤差分を補正できる仕組みが必要です。
・ENRの値を直接測定する設備がないので代替案が必要です。
ノイズSG
市販品のノイズSGは高価ですがENRが添付されているので一応安心です。ドライブ電圧が28vの物が多くて
Agilentの346シリ−ズとかAILTECHなどが有名です。
GigaSt v5ではNF-SG用電源28vをDC-DCコンから直接取れるように増強しました。
(しかし市販のノイズSGをドライブするだけの能力は まだありません。)
Agilent 346B ・01〜18GHzを基準 | 自作SGのENR |
NF-SGのENRはNF計(HP8970B)で346Bを基準として比較測定した値からズレ量を補正したものです。
ノイズのレベルを100MHz/1600MHzのバランスが最適となるようなR114を選択して調整しています。
自作のノイズSG ドライブ電圧は10--->28vに変更 |
Amp調整
SP入力レベルを10dBづつ変化させた時 波形も10dBづつ変化するのが理想ですが
GigaStは補正も加えてないので そんなに精度は良くないです。NFを測定する時この10dB
からの誤差があると そのままNFの誤差となります。
SP入力を10dBづつ変化させると LOGの直線性は こんな感じ |
NF欄でENRとAmpを設定 |
RF ATT 無し | RF ATT 6dB 有り |
そこでSetting画面・NF欄のAmpで この誤差を補正します。
方法は
1・まず正確なRF-ATT を用意します。測定予定の値に近いATTがベストです。今回は仮に6dBとします。
2・ENRは測定周波数点の値をENRの欄に0.1dB単位で入力します。 例 14.5dB---->145を入力
3・最初の測定はNF-SGと試料を直結して(RF ATT無し)NFを測定します。
読み取る前にAverageにチェックを入れて平均化表示モ−ドにするとNF値が読み取りやすくなります。
4・次に一度平均化表示をOFFにします。リタ−ンキ−を押せばOFFになります。
5・2回目の測定はNF-SGの出力にRF-ATTを入れた状態でNFを測定します。平均化表示もONにします。
6・以上2回の測定結果の差から誤差をキャンセルするようにAmpの値を入力します。
例 差が6.5dBの場合 6dBにするには -0.5dBなので 0.1dB単位にして -5を入力
ENRを増加させるとグラフ上では波形が下に(NFが大きくなる)平行移動します。
測定
NF測定系のTOTAL利得が80dB程度確保できている事が条件です。
この時SPモ−ドで観測すると雑音レベルが -50dBm近辺になっています。
1・NF測定モ−ドを設定するにはMODE設定=NFを選択します。
グラフ表示はNFモ−ド (Div=2dB/Dot表示)
NF-SG電源のON/OFF開始
2・Center/Span周波数を設定します。
3・これでNF波形が表示されますが平均値表示はOFF状態なので波形のゆらぎが大きいです。
4・そこで平均値表示にするためAverageをクリックします。
(平均値表示モ−ドはリタ−ン・キ−を押したりCenter,Span等の操作を行なうとOFFになります。)
4・時間経過と共に平均化効果でノイズが少なくなるので安定したと判断したら値を読み取ります。